第3回「ぬれた毛布」

私は、温泉に入って思い出すエピソードの中で「ぬれた毛布」という話があります。

入社した同じ能力の新入社員が三年たつと、二つのグループに分かれるのです。
やる氣を起こして、仕事に積極的に取り組む社員と、不平不満を言いながら、ほどほどでの仕事で満足している社員です。

積極的に新しい目標を作り出し、問題解決に取り組むグループと、そうでないグループに分かれるのです。
その原因は、新入社員が配属された所の上司の心の持ち方、いわゆる心構えにあるのです。英語ではこれをAttitudesと言っています。

まず、新入社員が配属され、職場にだんだん慣れてきます。親しくなってくると、上司も少しずつ本音を言うようになります。
そこで消極的な考え方をする上司は「今は景気が悪いから、いくら努力しても売上は上がらないよ」とか、「会社の方針がくるくる変わるからついて行けないよ」とか、そのうちに「この会社にはあまり将来性はないかも知れないよ」とかいって「ぬれた毛布」を、まだ不安のある新人の頭の上にかぶせて、やる氣の熱意を冷やしてしまうのです。

「ぬれた毛布」、ウェットブランケットは、相手のやる氣を失わせてしまう効果的な道具です。

一方、積極的な考え方をする上司は「今はこの会社は大変かもしれないけど、ここを乗り切れば素晴らしい会社になるし、また今後どんな困難に出会っても動じない忍耐力と知恵が身につくチャンスがここにあるよ」といって勇気づけしてくれるのです。

こうして、3年間消極的なことを言われ続け、「ぬれた毛布」をかぶせられて育った新人と、そうでない新人とでは、大きな違いがその後のやる気に現れるのです。
だから、リーダーというのは、いつも心の持ち方、心構えが消極的にならないように、気をつけなければならないのです。

そのためには、人生の目的をはっきりさせ、夢や志(こころざし)を持って前に進むことが大切だと思います。