第5回「縄文パワー」

今年(2006年)は美術界の異端児で、84才で亡くなった岡本太郎の没後十年になります。

岡本太郎の評価は亡くなられてからむしろ高まっています。彼を知らない若い世代も含め、社会の不安を吹き飛ばすエネルギーと内発的やる氣を彼の作品で感じる人が増えてきたのです。そのエネルギーの原点は実は縄文時代にあるのです。
きっかけは昭和27年(1952)8月偶然、上野の東京国立博物館で展示されている縄文土器を通りがかりに見たときでした。そこで、その力強さに感動して動けなくなってしまったというのです。

その岡本太郎さんと平成元年(1989)の12月24日、雪の降る中、八ヶ岳山麓にある尖石縄文考古館に縄文中期の土器と日本最古の国宝になったばかりの「縄文ビーナス」という土偶を見に行ったことがあります。八ヶ岳山麓の蓼科は、今から5500年前、日本の縄文文化の最も栄えた頃の中心地で、今の東京だったと言えるのです。

当時の日本の人口は約20万人と推定され、この八ヶ岳山麓に15%以上の人口が集中していたとも言われています。また、露天風呂に入る習慣も、その頃からあったのです。
縄文人は露天風呂に入ることによって、毎日を生き抜くための心身のエネルギーを吸収していたのです。

岡本太郎は、日本においてたった一つの最初のすぐれた芸術性とオリジナリティは縄文中期の土器しかない、という結論に達したのです。その土器の中に日本民族の生命力の原点を発見したのです。まさしく、「和の原点は、縄文の心にあり」なのです。(縄文土器の中にダイナミズム、すなわち自分たちの生活の中から生れた「今を生きる」ことへ力強さと人生を達観する純粋な素朴さがあるのです。)今、瞬間瞬間に失いつつある人間の根源的な情熱を呼びさます力があるというのです。

志楽の湯のロビーには、幸運にも岡本太郎が作った「縄文人」の銅像があるので、是非見に来られ、縄文パワーを吸収してください。