第8回「『イエス、アイキャン』の精神」

 ある禅寺の僧侶が、弟子である雲水たちにこんな難問を投げかけました。「空に星はいくつあるのか」

 さて、弟子たちは困って考えあくねていました。その時、一人の弟子が立ち上がり禅道場から飛び出しました。そして、庭に出ると空を仰いで「一つ」、「二つ」、「三つ」と、星の数を数え始めたのです。その弟子は、師匠の投げかけた難問に考え込んでいるより、星の数を実際に数えた方が早く答えが出ると思ったのでしょう。

 世の中には、「それはわかりません」とか「それは出来ません」と簡単に言ってしまう人がいます。この弟子は、そうした先入観を持たずに素直に「イエス、アイキャン」の精神で、難問の問題解決に取り組み出したのです。

 私たちは、小学校に入ってからは学期末にはいつもテストを経験していました。そして中学校に入れば入ったで、受験のために偏差値を気にしながら勉強をし始めます。その時に、どのように問題に答えるかというと、まず解きやすい問題から取り組んだと思います。そうした習慣から難しい問題を与えられると、後回しにしたり、「ノー」といって拒絶してしまうのです。

 「ノー」という言葉は聖書には1376回出てきます。「イエス」はわずか4回です。モーゼの十戒では「ノー」が8回「イエス」が2回です。西洋でもそうなのですから、何事にも控えめな東洋人は「ノー」という否定語がもっと多くなるのではないかと思います。

 ところで「人生における大きな喜びは『君にはできない』と世間が言う事をやることである」とウォルター・バジョットというイギリス人が言っています。
 人生ではしばしば難問に直面することがあります。その時は「私は、どんな難問に出会っても、その問題を解決する氣力、体力、知力、更に泉のように湧いてくる知恵と勇気を持っている」と自分に言い聞かせて、発奮しましょう。