第9回「ほめることと勇気づけ」

世の中の親たちは、子供の成績がよければ褒め、悪ければ叱るという「賞罰方式」で臨むことが多いと思います。しかし、この「賞」と「罰」には、子どもの「やる氣」を起こすという点からは、問題があるのです。

例えば、小さいときから成績表をもらうたびに「いい成績だわ。お母さん、とってもうれしい。今度も頑張ってね」などと褒められていると、その子は褒められていないと自分には存在する価値がないと思い込み、心が不安定になるのです。よい成績をとったときは、自分の存在が認められますが、悪い成績をとったときは、自分の存在は認められないと思い、自信をだんだん失ってしまうのです。そして、人の評価ばかりを気にする子になってしまうのです。これが「褒めること」の弊害なのです。

逆に「罰」ばかり与えると自信を失うだけでなく、反抗的な性格が形成されていきます。そして、好ましくないことを言ったり、したりして周りの関心を引いて親をイライラさせます。更に主導権争いに親を巻き込み、相手を怒らせたりします。あるいは復讐をして親を困らせたり、逆に無気力な態度を見せて親をガッカリさせます。

それでは、どういう方法で子どもの自発的なやる氣を起こしたらよいのでしょうか。それには勇気づけという方法があります。
 例えば、子どもが「ぼくの絵はうまいと思う?」と言ってきたら、「あなたはどう思うの?」と聞いてみるのです。肝心なことは、子どもがどう感じているのかをまず認めるのです。テストで100点を取ってきたら、「テストの点がよくて、とても嬉しいみたいね」と言うだけで、実は充分なのです。

 「賞罰方式」が子どもの人格や成績の結果に対して行われる、一時的な刺激なのに対して、勇気づけは子供の将来に向けての心の持ち方、心構えに働きかけるのです。ほか人との競争ではなく、より良くなろうとする自分自身との競争に働きかけるのです。

 これは子どもの世界だけでなく、大人の世界や企業社会でも通用する考え方なのです。