ほほ笑みは人にどんな影響を与えるか にっこりほほ笑みかけられると、私たちの気持ちは思わずなごんでしまいます。なぜそうなるのでしょうか？今では、行動科学者たちによってそれが解明されています。 彼らに言わせると、ほほ笑みは、相手の心を活気づけます。ほほ笑みながら、「あなたのご意見をお聞かせください」と頼んだ方が、むっつりした顔で頼むよりも、内容の充実した返事を引き出せるというのです。これは、営業担当者なら、ぜひとも覚えておかねばならないことです。 ニクソンが最初の大統領選挙に敗れたのは、選挙運動中、国民に笑顔を見せることが少なかったからだ、というのが定説になっています。つまり、ニクソンは国民にあまりよい印象を与えなかったのです。 2回目の大統領選挙の時、テレビやニュース写真に映し出されたニクソンが、笑顔を見せないことは、まずありませんでした。ニクソンは当選したのです。 デパートでは、お客様にはほほ笑みを絶やすな、と従業員を教育すると、売りあげが20％も伸びるといわれます。 ある企業の社長は、部課長に「朝出勤したら、笑顔で部屋に入れ」と命令しています。 この社長の意見はこうです。「幹部が笑顔で仕事を始めれば、職場の雰囲気は、一日中なごやかになります。部下が自然に調子を合わせることになるからです。上の者がほほ笑んでいれば、部下は活気づき、仕事に張り合いがわき、社内は万事うまくいっていると感じます。逆に、しかめっ面で部屋に入ろうものなら、何か悪いことがあるようだ、という印象を彼らに与えてしまいます」この社長の言うとおりです。 部下は上の者から、すべてが順調にいっているというサインを送ってもらいたがっています。ほほ笑みは、この有力なサインなのです。無表情な顔、深刻な顔は、全く逆の効果をもたらします。 「大統領のしかめっ面の写真が、新聞やテレビに出ると、ニューヨークの株式は2ポイント下がる」と言った人もいます。 つまり、ほほ笑みは、コミュニケーションのすぐれた方法なのです。あなたに会えてうれしい、物事はうまくいっている、生きることはすばらしい、と表現しているのです。 深刻な悩みごとがある時でも、元気を出して問題に取り組みましょう。 それには、まず何よりもほほ笑むことです。考えるのはその次でいいのです。 ほほ笑みは、人との出会いを楽しいものにします。通りすがりの見知らぬ人であろうと、自分の子供であろうと、苦情を言いにきたお客様であろうと、一瞬の間にすれ違う運転手であろうと、にっこり笑いかけるだけで、二人の出会いは快い経験として、胸に残るのです。 それなのに、人々はほほ笑むのを、あまりに忘れすぎています。 ほほ笑みかけなさい ほほ笑みは、あなたの考えを顔に書き表す方法です。気持ちよいと感じていることを、生き生きと表現する方法です。だから、ほほ笑みは、心の奥底からわき起こったものでなくてはなりません。 それには、まず、他の人に好意を持つように心がけ、次に、そうした心構えを、ほほ笑みで表現すればよいのです。 忘れてならない言葉、それは、ほほ笑みを「実行すること」です。 朝、起きぬけに、あなたの顔を鏡に映して、にっこり笑ってみなさい。 家族と顔を合わせたら、にっこりほほ笑みかけてみなさい。 出勤途中の交差点で、あなたの車に警笛を鳴らす、しかめっ面の運転手がいたら、にっこりほほ笑みかけてみなさい。 仕事をしている人に、ほほ笑みかけてみなさい。 エレベーターで乗り合わせた人に、街ですれ違った人に、買い物で偶然一緒になった人に、ほほ笑みかけてみなさい。 ウエイトレスや郵便屋さん、銀行の窓口係、そして近所の人たちに、ほほ笑みかけてみなさい。 「……にほほ笑みかけてみなさい」と、いろいろな例を挙(あ)げてきましたが、この「……に」には、「……に対して」という意味だけでなく、「……のために」の意味も含まれています。 なぜなら、ほほ笑みかけることは、彼らのためにもなるからです。あなたがほほ笑みかけると、彼らもほほ笑み返してくるのに気づくでしょう。このほほ笑みは、「ありがとう」の意味を表しているのです。 「ありがとう。お陰で、今日は昨日よりいい日になりそうです。あなたは、私を大切な人間だと認めてくださった。ごく短い時間の出会いでしたが、私はとても勇気づけられました」と言っているのです。